【気候変動に具体的な対策を】宇宙からCO2を観測
JAXA・国立環境研究所
温暖化防止へ貢献目指す
この夏も日本各地で記録的な猛暑が続く。地球温暖化対策が国際的な課題となる中、温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを宇宙から観測するプロジェクトがつくば市の研究機関を拠点に14 年前から続けられている。SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」にもかなう取り組みで、現在は温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」と同2号機の2機体制で宇宙からCO2 などの濃度分布の観測を続け、温暖化防止への貢献を目指している。
人工衛星による温室効果ガスの観測は、環境省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立環境研究所(国環研=つくば市)の共同プロジェクト。JAXA は筑波宇宙センター(同市)を主要拠点に、衛星の開発・打ち上げから運用、観測データの処理までを担当。国環研は観測データを基にCO2などの濃度や吸収排出量の推定などを担う。
いぶき(GOSAT)は2009 年に世界初の温室効果ガス観測の専用衛星として打ち上げられ、現在まで約14 年にわたりCO2 とメタンの観測を続ける。18 年に打ち上げられた後継機のいぶき2号(GOSAT-2)はより高性能なセンサーを搭載し、一酸化炭素も観測対象に加えた。
二つの衛星のミッションは宇宙から世界中の温室効果ガスを均一に観測すること。いぶきの打ち上げ以前は、地上に機械を置くなどして観測していたが、観測地点数が少なく地域も限られていた。
JAXA のGOSAT-2プロジェクトチーム主任研究開発員の重藤真由美さんは、宇宙から観測する意義について「観測地点数が飛躍的に増加した。宇宙から地球全体を同じ物差しで見続けられることで、地球全体の濃度の変化が一目で分かるようになった」と話し、「共通の物差し」としての役割を強調した。
国環研衛星観測センターの松永恒雄センター長は「約14 年にわたり観測を続け、人為起源を含めたCO2 やメタンの吸収排出量を計算してきたのが大きな成果」と説明した。
来年度には観測方式が異なる3号機(GOSAT-GW)の打ち上げも予定される。
濃度上昇、顕著に
宇宙から観測したCO2 濃度分布の09 年から最近までの推移を見ると、世界全体で濃度が低い青色から緑色、黄色、オレンジ色と年々、濃度が高い赤色に近づいていくのが顕著に分かる。全大気中のCO2 平均濃度は、森林の光合成の影響で季節変動しながら右肩上がりに上昇を続ける。観測を通じ、コロナ禍に大都市のCO2 増加量が平年よりわずかに減少したことも分かった。
一連のプロジェクトが目指すのは、観測データの提供を通じて、世界各国の温暖化防止に向けた取り組みを後押しすることだ。
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、今世紀末の世界の気温上昇を産業革命前と比べ2度未満、できれば1・5度に抑える目標を掲げる。重藤さんはパリ協定への貢献を掲げ、「観測データを提供していくことで、排出削減の取り組みや機運を世界規模で広げていければ」と願う。松永センター長は「メタンの濃度も上昇を続けている。自然由来も含めて詳しく調べていきたい」と話した。