8月の「いばらきSDGsプロジェクト」は、県内大学で行われているSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを、学生自身が伝える「Campusリポート」の第2回。茨城キリスト教大(日立市)の「IC with Uプロジェクト」を紹介する。

外国人の学びを支援
多文化共生、県北から発信

日本語の学習支援の様子

茨城キリスト教大

 茨城キリスト教大は、2021年から「IC with Uプロジェクト」を進めている。外国にルーツのある子どもの学習支援など、目標4「質の高い教育をみんなに」などに関わる多文化共生に向けた取り組みを続ける。

ゲーム織り交ぜ

 プロジェクトは、①学習支援(外国にルーツのある子どもたちへの日本語学習や教科学習支援)②地域への理解・浸透(異文化理解への素地づくり)③人材育成(多文化協働クリエイターの育成)―で構成する。

 茨城キリスト教大は、多文化協働クリエイター講座の一環で、外国にルーツのある子どもたちに日本語を教える授業を展開している。私は授業を通じて、近隣に暮らす中国出身の中学生やミャンマーから来た帰国子女の高校生らの学習を支援している。中学生の子は親の仕事の都合で言語の発達途中で来日し、日本語があまり話せない。日本語が分からないまま小学校生活を過ごしたこともあり、教科科目も苦手だ。この子には、テキスト学習とゲームを織り交ぜながら楽しく日本語を教えている。また、苦手教科の勉強のサポートも行なっている。生活で使う言語能力よりも学習の際に使う言語能力の方が習得に時間がかかるといわれているためだ。

IC with Uプロジェクトのチラシ

 一方、帰国子女の子はミャンマー語と英語が得意。日本語も話せるが読み書きが苦手なので、古文や小論文を中心とした学習支援をしている。

 以前、高校入学を希望する、来日間もない中国出身の男の子を支援したこともあった。授業を通して、子どもたちが日本語の能力不足だけでなく、家庭環境をはじめとした多くの問題を抱えている現状を学んだ。

ドロップアウト

 在留外国人数が増加し、また優れた外国人材の必要性が高まる中、多文化共生・協働の推進は重要な社会課題となっている。外国人住民は、常総市のような外国人集住地域に集中していると思われがちだ。しかし全国の統計データ(出入国管理庁など)を見ると、在留外国人の多くは、実は県北地域のような外国人散在地域でも暮らしていることが分かる。

 公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数は、全国で6万9123人に達する(文部科学省、23年5月現在)。この中には、日本社会に順応している子どもたちも少なからず存在する。言葉の壁などの困難に直面し、学校からドロップアウトする子どもも多い。外国にルーツのある子どもたちへの支援は、多文化共生・協働の推進に向けた大切な取り組みであり、誰一人置き去りにしないというSDGsに合致している。

 別の授業では、小学生とその家族を中心とした地元住民に異文化理解の重要性を伝えるイベントが開かれた。イベントでは、地元の子どもたちが異文化に触れる機会が少ないと知った。さらに、多様な専門性を持つ大学教員がチームを組み、行政と連携しながら、IC with U関連の研究を進めている。この研究成果は授業で学ぶことができる。

 23年には、大学で「外国にルーツのある子どもたちと共に生きよう」と題したシンポジウムが開かれた。県北地域での多文化共生・協働の在り方について、多様な立場の人々が議論を交わした。

 県北地域はサポート対象となる子どもが散在している分、外国人集住地域よりも支援が難しい。学校現場の先生方や行政関係の方々は、懸命にこの問題に取り組んでいる。しかし、一部の人たちの尽力のみでは限界がある。地域が一丸となって支援を進める必要がある。

 私は日本語教師を目指している。大学での学びを生かし、自分も将来、外国にルーツのある子どもたちを支える人材になりたいと考えている。(文学部文化交流学科3年 熊谷勇佑)