10月の「いばらきSDGsプロジェクト」は、県内大学で行われているSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを、学生自身が伝える「Campusリポート」の最終回。常磐大(水戸市)のゼミとサークルが日本語を学ぶ若者に絵本を届ける活動に触れる。「もっと知りたい!」では関連の書籍を紹介する。

絵本で“想い”つなぐ
日本で回収、フィリピンへ

オイスカ・バゴ研修センターでの絵本ワークショップ

常磐大

 常磐大(水戸市)の小関一也准教授ゼミとボランティアサークル「フェアリーテイル」が主催する「絵本プロジェクト」は、家庭で読まれなくなった絵本を集め、フィリピン・ネグロス島で日本語を学ぶ若者たちに、教材として絵本を届ける活動だ。公益財団法人オイスカ・バゴ研修センター(バゴ市)から要請を受けて、昨夏から絵本の回収を始め、春には現地を直接訪問し絵本を届けた。絵本を届けるだけでなく、絵本の思い出やエピソードをつづったメッセージカードを添えたり、絵本の魅力を伝えるワークショップを現地で開いたりして、絵本を提供する日本人とそれを受け取るフィリピン人の〝想い〞をつなぐ、SDGs活動を実践する。

192冊集める

 絵本回収には、たくさんの学生や教職員が協力してくれた。活動の趣旨に賛同してくれた系列校の常磐大高や常磐大幼稚園からも、絵本とメッセージカードの提供があった。

絵本回収を呼び掛けたポスター

 また、水戸市立西部図書館では、昨年11月に1カ月間、絵本の回収箱を設置させてもらい、読書週間の3日間、図書館を訪れた子どもたちに読み聞かせをする機会もいただいた。読み聞かせ活動には、多くの子どもたちが参加し、メッセージカード作りにも協力してくれた。温かく和やかな雰囲気の中で、フィリピンに想いをつなぐ活動ができたと感じている。

 最終的に、絵本192冊とメッセージカード62枚が集まった。併せて募金活動も行い、新たに20冊の絵本を購入することもできた。

現地で国際交流

 今年2月末にはフィリピンを訪問し、バゴ研修センターで日本語を学ぶ若者たちに、絵本の魅力を伝えるワークショップを実施した。ワークショップではまず、これまでの活動の様子を英語で説明し、日本でたくさんの方が協力してくれたことを伝えた。

絵本ワークショップの参加者たち

 次に、日本人とフィリピン人がペアになり、絵本とメッセージカードを一緒に読み、感想やその時の気持ちを共有した。活動中、現地の若者たちが真剣なまなざしで絵本を読んでいる姿や、楽しそうに笑顔で読んでいる姿が印象的だった。参加した若者たちからは、「絵本を提供してくださった皆さんの優しさに感謝します」などと気持ちを伝える言葉や、「メッセージを読んで、この絵本が大好きだったことが分かった」などと提供者の想いを感じ取ったコメントがあった。

 初年度の活動で不安に思うこともあったが、無事に絵本を届けることができ、地域と世界をつなぐSDGs活動に少し貢献できたのかなと感じている。活動にご協力いただいた全ての皆さんに心から感謝したい。

 本年度、リーダーを引き継いだ3年生の郡司慎斗さんは、来春のフィリピン訪問に向けて「常磐小の2年生と見川小の5年生が新たに活動に参加してくれる。水戸とネグロスをつなぐ支援の輪をもっと広げていきたい」と語った。私たちの代が始めたプロジェクトが、水戸と世界をつなぐ架け橋として、さらに発展していくことを期待したい。(総合政策学部総合政策学科4年・斉藤好美)