県政キャンペーン 介護人材の確保 

外国人受け入れ促進

少子高齢化などに伴い、茨城県内の介護人材不足が課題となっている。厚生労働省によると、3月の茨城県の介護関係の有効求人倍率は全業種の平均を上回る4.65だった。茨城県では2040年度に65歳以上の高齢者数がピークを迎え、介護職が1万2000人以上足りなくなると推計されている。外国人の誘致やテクノロジーの活用など、さまざまな対策で人材確保を進める。


■インドに着目、育成へ覚書

特別養護老人ホーム「しらとり」で利用者と接するスタッフのインド人女性=筑西市内

介護人材不足が課題となる中、茨城県は介護現場が外国人材を確保し、受け入れるための支援に取り組んでいる。新たに、世界最多14億人超の人口を抱え、働き盛りの若者であふれるインドに着目。5月、インドの日本語学校2校と人材育成に関する覚書を締結した。10月に計5人の留学生が来日し、茨城県内の日本語学校で語学力のさらなる向上を図っている。来年4月には、在留資格の永続的な更新が可能となる「介護福祉士」の養成校に入学し、最短で27年度から現場で働く。

茨城県はこれまでも、ベトナムやネパールなどの外国人留学生を対象に、茨城県内の介護福祉士養成校への修学ルートを開拓してきたが、新たにインドに拡大。▽平均年齢20代後半▽国内の失業率が高い▽多言語国家で言語習得能力が高い―といった背景から、茨城県での活躍に期待を寄せる。

通算5年在留できる「特定技能1号(介護)」の人材確保にも取り組む。茨城県担当者は11月、インド人が日本語や介護の基礎を学ぶ現地の送り出し機関を訪問。ルート開拓を目指し、関係を構築した。12月26日には茨城県庁でインド介護人材セミナーを、2月中旬にはインド現地視察ツアーを実施し、事業者の理解促進を図る。 

同国からの受け入れに、独自に注力している施設もある。征峯会(茨城県筑西市)が運営する施設では12月から、計4人が就業。特別養護老人ホーム「しらとり」で働く女性2人はいずれもインドの看護師資格を持ち、経験を生かす。本年度中にはさらに8人加わり、計12人になる見通しという。

塙津雄高齢部門本部長は、高齢化がピークを迎える40年を見据え「海外からの人材は必須」と語り、今から受け入れを進め、育成できる環境を整えていく重要性を指摘する。

茨城県はこうした先進事例の紹介、施設関係者対象のセミナー、海外からの人材と施設のマッチング支援、日本語習得や介護福祉士を目指す外国人材の受け入れ施設への助成などにも取り組む。県担当者は「インドをはじめ外国人材の魅力を伝え、機運醸成を進めるとともに、好循環につなげたい」と話す。


■テクノロジー普及支援
  職員負担軽減、質向上へ

睡眠情報を取得できる機器を導入したベッドで寝起きする施設利用者=水戸市内

介護職員の負担軽減と人材不足を補うことを狙いに、茨城県は2015年度から「介護テクノロジー」の活用を推進する。国と県で費用の半分を補助する介護機器の普及支援に取り組み、昨年度までの9年間で延べ約270施設が利用。睡眠データ取得や排尿支援、入浴介助、ベッドからの移動支援の機器など2085台が導入された。

ベッドに敷くなどして睡眠データを取る機器は、デジタル端末を通して利用者の睡眠と覚醒、心拍や呼吸数などが分かる仕組み。睡眠や健康状態の把握・改善のほか、起きているタイミングで排せつの介助ができるなど、巡回の負担減につながる。

超音波で膀胱にたまった尿の量を計測する排尿支援機器は、腹部にパッドを取り付ける。排尿の失敗や、失敗による自信の喪失を防ぐ。

こうした介護テクノロジーの導入を進めてきた特別養護老人ホーム「アクティブハートさかど」(水戸市)の大関雄志施設長は「離職が減った」と、効果を実感している。負担軽減、介護の質向上、職員の意欲の高まりにつながったといい「経験だけに頼らない、根拠に基づく介護、予測できる介護を推進したい」と先を見据える。

茨城県担当者は「テクノロジーの活用は(介護職志望者の)施設選びの判断基準になってきているのではないか」と指摘。今後は県全体への普及を目指し、「もっと制度を活用してほしい」と話す。


■在宅ケアハラ防止
  相談窓口設置、啓発も

啓発グッズを配布した在宅ケアハラの撲滅キャンペーン=ひたちなか市内

茨城県は本年度、在宅介護・看護などの従事者が受けた不快や苦痛に対応する「いばらき在宅ケアハラスメント相談窓口」を開設した。県内外で問題となっている「在宅ケアハラ」と向き合い、離職につながらないよう環境改善を図る。

同窓口は在宅ケアハラを受けた従事者の悩みや不安の解消に努め、事業所の管理者からの相談にも応じる。県社会福祉協議会に委託し、7月に開設した。対応時間は平日の午前10時~午後4時まで。利用無料。

相談内容は市町村に情報提供する方針。高齢者支援について話し合う「地域ケア会議」などの場で検討し、対策につなげる。

茨城県は昨年、在宅ケアに関連する事業者を対象に調査を実施。協力した84事業者のうち、半数超が「ハラスメントを受けた」と回答している。具体的には蹴る、つばを吐くなど身体的被害に加え、精神的被害や性的被害もあった。

このほか、茨城県は2024年6月に在宅ケアハラの防止ガイドラインを策定。11月にはJR水戸駅北口や県庁、ひたちなか市の商業施設で撲滅キャンペーンを実施するなど、啓発にも力を入れている。相談窓口☎029(303)7600。