多様性を豊かさに
国際協力通じ、日本に元気


JICA筑波 高橋 亮所長

国際協力機構(JICA)の県内拠点、JICA筑波(つくば市)は、開発途上国の国創りのリーダーとなる行政官や技術者を受け入れ、農業や防災、気候変動を含めた人材育成を行っている。スローガン「世界への想(おも)いが繋(つな)がり、実る場所」を掲げ、開設45周年の節目を迎えた。高橋亮所長は「JICAのあらゆる取り組みは、SDGsと密接に関連する。多様性を豊かさにつなげ、茨城や日本も元気にする国際協力を目指し、途上国と日本との結節点としての役割を果たしたい」と話す。

二つの起源

JICA筑波の起源は二つある。一つは、筑波研究学園都市の研究機関などとの連携推進を図る「筑波インターナショナルセンター」の発足(1980年)、もう一つは「満蒙開拓青少年義勇軍内原訓練所」の流れをくむ「内原国際農業研修ター」の筑波移転(81年)だ。「国創りは人づくり」として、JICA筑波は農業、防災分野を含めて100以上の開発途上国から計3万人を超す研修員を受け入れてきた。

「食と農」体験

今年2月にリニューアルオープンした「JICAつくばひろば」は、「世界の食と農」をテーマとする体感型の展示コーナー。食品サンプルを載せると食材の国内自給率が分かるコーナーや、アフリカの米作を紹介するコーナーがある。高橋所長は「身近な食を通じて私たちの日常と途上国との関係性、気候変動、貧困問題へのつながりを自然に感じられるように工夫した」と説明する。小中学生の見学者にも分かりやすい展示になっている。

食品サンプルを載せると食材の国内自給率が分かる展示コーナー

今年60周年を迎える「JICA海外協力隊」に関し、JICA筑波は募集窓口も務める。茨城県から派遣された海外協力隊の総数は1194人(全国計5万7671人)。途上国での2年間の活動経験を基に地方創生や地域課題に貢献する人も多いという。新たに宇宙飛行士となった諏訪理(まこと)さん(つくば市出身)も海外協力隊経験者の1人だ。

共通言語に

SDGs関連の啓発活動にも力を入れる。高橋所長は、茨城新聞社が実行委員会と共催する高校生のアイデアコンテスト「みらい甲子園」県大会の実行委員を務める。「SDGsは国籍、年齢、立場を超えて共に未来を創る共通言語。若者たちの優しい感性を引き出し、身近なことから豊かな社会づくりを自分ごとにしていく貴重な体験。どんどん挑戦してほしい」と本大会を高く評価する。

さまざまな事業を通して日本への信頼や円滑な国際関係づくりを支えるのがJICAの役割だ。重視するのは、分断と対立ではなく、対話と協調。「国内外の多様なパートナーとの共創、革新、その先の環流により、複雑高度化する途上国と日本の共通課題に果敢に挑める仕事です」と、職員としてのやりがいを強調する。


たかはし・まこと 1970年生まれ、神奈川県大和市出身。千葉大大学院園芸学専攻修了。95年にJICA入職。パキスタン、アフガニスタンの駐在、人事企画課長、スーダン事務所長、企画部次長兼審議役などを経て、2024年1月から筑波センター所長。