日比結ぶ梅染め、組紐
フェアトレード商品開発

常磐大

県内の大学で行われているSDGsの取り組みを学生が紹介する「Campusリポート」、本年度の初回は常磐大(水戸市)の「梅染め・組くみひも紐プロジェクト」を紹介する。海外の生産者と独自商品を開発し、公平・公正な取引「フェアトレード」を進めている。

組紐を伝える現地ワークショップ=フィリピン・バゴ市

地域とつながる

常磐大の小関一也准教授ゼミとボランティアサークル「フェアリーテイル」が取り組む「梅染め・組紐プロジェクト」は、日本とフィリピンをつなぎ、フェアトレード商品を共同開発している。水戸の伝統工芸「梅染め」と、フィリピン・ネグロス島の「草木染め」を組み合わせ、現地の生産者と協力しながらオリジナルの組紐商品を制作。現地の国際NGO「オイスカ・バゴ・トレーニングセンター」と連携し、地域と世界を結ぶユニークな活動を続けている。
梅染めの技術は、水戸ユネスコ協会の林和男先生に、梅の廃材を煮出して染液を作るところから教わった。組紐は大学OBの職人、鈴木康夫さんから直接学び、技術を磨いている。火を使う場所の確保が課題だったが、地域のシニア団体「木もれ陽び」の皆さんの協力でアトリエを借り、活動している。常磐大同窓会からは奨励金の給付を受け、必要な道具や材料の購入を支援してもらっている。

「木もれ陽」の皆さんと学生たち=水戸市内

プロジェクトは開始から3年目を迎えた。この間に、水戸ユネスコ協会、文化デザイナー学院、水戸工業高、常磐大留学生らと連携して、梅染めの魅力を発信するワークショップや展示会を開いてきた。こうした世代や団体を超えた地域とのつながりが、私たちの活動の大きな支えになっている。

想い届ける

日本とフィリピンで染色した絹糸を組み合わせ、「TrueLover’s Knot(愛結び)」という技法で2本の組紐を結び合わせる新商品の開発に取り組んできた。「自分のつながりを、大切な人にも届けてほしい」という願いを込めた商品だ。

日本とフィリピンの組紐を結んだ新商品


日本からは、梅染めだけでなく、「竹染め」(梅と竹で偕楽園の陽と陰を意味する)、藍やマリーゴールドなどの自然素材で染めた糸をフィリピンに持ち込み、現地で生産者の皆さんと相談しながら、ヒマワリの種やアボカドなどで染めた糸と組み合わせた。国境を越えて、日本とフィリピンの色と色、手と手、文化と文化が結ばれ、私たちの組紐商品は生まれたのだと思っている。
5月に水戸市の中心市街地で開催された「水戸まちなかフェスティバル」では、ネグロス島の手作り絹製品とともに、私たちの組紐商品も展示販売した。多くの市民がブースを訪れ、私たちの活動に関心を寄せてくれた。当日のアンケートでは、96%が「日本とフィリピンのパートナーシップを感じた」と回答し、97%が「フェアトレード商品を買うことが国際協力につながる」と肯定的に評価をした。市民との交流を通じて、フェアトレードの価値を改めて実感する機会となった。
今後は、制作の過程や現地生産者の声を紹介する動画や展示にも力を入れていく。次期代表の小室晴さん(総合政策学部3年)は「1人でも多くの方に、活動の意味を届けたい」と意気込んでいる。私たち学生の小さな活動が確かな広がりにつながることを信じて、これからも〝つながり〞を大切に歩み続けたい。
ものを売るだけでなく、想いを届ける。それが、常磐大生が取り組むフェアトレード活動の形だから。
(総合政策学部総合政策学科4年・福田来夢)