8月の「いばらきSDGs プロジェクト」は、県内大学でのSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを学生自身が伝える「Campusリポート」の第2回。茨城大(水戸市)の学生サークルが、農業や国際交流を通じて社会課題に向き合う活動を取り上げる。JICA筑波図書館(つくば市)の司書が関連書籍を紹介する「もっと知りたい」は米作りについて触れる。県内のSDGs関連イベント情報も新たにお届けする。
▶次回は9月20日付

「やってみたい」形に
多様な企画、社会課題挑戦

茨城大
茨城大(水戸市)は、学生が地域と関わりながら、SDGs関連の社会課題に挑戦する活動を展開している。2024年4月に水戸キャンパスで発足した学生サークル「Linking(リンキング)」はその代表的な存在だ。現在、学部や学年を越えた67人が所属。地域での実践を重視した多様な活動に取り組んでいる。
4テーマ展開
「Linking」という名は、人や地域とつながり続けるという意味が込められている。サークルでは、①フェアトレード②国際交流③農業④公共交通―の4テーマに沿った企画を設定。いずれも学生の「やってみたい」から始まっている。「興味をきっかけに社会課題を考えることで、他人ごとではなく自分ごととして向き合える」と、共同代表の前神夏音さん(20)=地域未来共創学環2年=は語る。
中でも活発なのが、公正な貿易を意味するフェアトレード企画だ。高校時代からSDGs活動に関心を寄せ、実際に活動していた前神さんを中心に始動。日立市のコーヒー焙煎(ばいせん)所と協力し、オリジナルのフェアトレードコーヒーを開発した。学園祭「茨苑(しえん)祭」や、水戸市内の文化祭「水戸まちなかフェスティバル」「一切合祭」などのイベントで販売し、来場者にフェアトレードの意義や背景を伝えている。「コーヒーを目当てに来たお客さまでも、帰るころにはSDGsへの意識が芽生えている。そんな活動にやりがいを感じる」と前神さん。今後はフェアトレードチョコレートの販売や、出前授業も予定している。
農業体験、月1回
農業企画では、農家出身の村松真衣さん(20) =地域未来共創学環2年=を中心に、地域の農家での農業体験を月1回実施。昨年12月には、規格外野菜を大学近くで配布する「ベジタルレスキュー」を行った。フードロスと学生の食生活支援という二つの課題を同時に考える取り組みで、村松さんは「農業に興味がなかった学生も、現場に触れることで関心を持つようになった」と話す。今後は、規格外野菜を調理するイベントなどを検討している。

国際交流企画では、「言葉に頼らない交流」をテーマに、易しい日本語や非言語的コミュニケーションを取り入れたイベントを準備している。公共交通企画では、持続可能な地域交通のあり方を学生の視点で考える活動が始まっている。
地域共創1期生
茨城大は、地域との共創をテーマとした学際的な教育組織「地域未来共創学環」を設置しており、Linkingのリーダーたちはその1期生でもある。学びを実践へとつなげる中で、学生自身の視野も広がっている。

Linkingは、SNS(交流サイト)や地域イベントでの発信を重視し、学生の取り組みを外に広げている。企画を越えたサークル全体でのイベント開催も目標の一つだ。「SDGsが達成され、活動の必要がなくなることが本望」。そんな思いを胸に、学生たちは日々行動を続けている。
(地域未来共創学環2年・土屋結女乃)