9月の「いばらきSDGsプロジェクト」は、県内大学でのSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを学生自身が伝える「Campusリポート」の第3回。茨城キリスト教大(日立市)の学生団体が、託児などの子育て支援を通じた社会貢献活動を展開する様子を紹介する。JICA筑波図書館(つくば市)が関連書籍を案内する「もっと知りたい!」は、英国のシングルマザーたちの物語をお届けする。
▶次回は10月22日付

子育て支援 地域力で
学生、駅前で託児担う

茨城キリスト教大
茨城キリスト教大(日立市)の中島美那子教授ゼミを母体とした学生団体「子育て応援隊NS26」は、地域の子育て支援を行っている。本団体は10数年前に結成され、これまで絶えることなく代々引き継がれてきたものである。
事前登録不要
NS26には地域の団体と連携しながらずっと引き継いでいるものがいくつかある。その代表的なものが、日立駅前の屋内型子どもの遊び場「Hiタッチらんど・ハレニコ!」の一角を借用しての託児だ。月2回(現在は第1水曜日と第3日曜日)実施しているこの託児は、今年で13年目となり、年間150組程度の親子が利用してくれている。
13年前にこの取り組みを始めるきっかけとなったのが、大学と日立市との連携事業「学生プロジェクト」である。当時の社会では保護者が「食事や買い物」など自分自身の楽しみのために子どもを預けることが奨励されていなかったことに着目し、「事前登録不要」「預ける理由不問(むしろリフレッシュを歓迎)」というルールを取り入れて託児に臨み、保護者にアンケートや聞き取り調査に協力してもらった。そこでの意義が学生自身にも実感でき、その後NS26の代表的な活動となり、今に至っている。
創造力はぐくむ
他にもNPO法人「ひたち親子の広場」(日立市)との関わりも深く、本年度も同NPO主催の「忍者修行あそび」に参画した。この遊びは子どもたちの創造力や対人関係力などを育む取り組みであることから、NS26の先輩らの中には自ら助成金を獲得して主催し、逆にNPOにそのサポートを依頼した年もある。

さらには大学内の子育て支援施設「アンネローゼ」で頻繁に行われている保護者向け子育て講座の間の託児は、NS26の活躍の場となっている。同施設で開催するティーンエージャーを対象とした居場所事業でも、仲間関係を育む遊びを担当している。
安心できる存在に
このように地域と密接に結びついた日々の活動がNS26メンバーを成長させてくれることは言うまでもない。一方で、活動は単なるボランティアというだけではなく、ある信念の下に行っていることにも触れたい。それは、子どもと身近な大人との間で形成されるアタッチメント(愛着)関係は、保護者と子どもとの間だけで築かれるものではない。そのため子育ては母親だけが一人で頑張るものではなく、周囲のさまざまな大人が子どもにとって安心できる存在になることが必要である。学生が地域に出て子どもたちと関わることで、自分のことを大切にしてくれる人や場が他にもあるということを全ての子どもたちに分け隔てなく実感してもらいたい。そんな信念を持って活動している。
私たちがメンバーとして活動するのは在学中のみであり、決して長い期間ではない。しかし卒業後もNS26の信念を胸に社会に貢献していきたいと思っている。併せてNS26は今後もしっかりと後輩たちに引き継ぎ、市民社会のより良いパートナーであり続けてほしいと思っている。
(茨城キリスト教大文学部児童教育学科3年浜口紗帆)