《もっと知りたい!②》実話がモデルの小説

SDGsへの理解を深めたい人にお薦めの本をJICA筑波図書館の司書、松田ミカさんが紹介する「もっと知りたい!」。本年度の2回目は、居住するホームレス用シェルターから立ち退きを迫られたシングルマザーたちが立ち上がり、社会運動を巻き起こす実話がモデルの小説を取り上げる。


リスペクト R・E・S・P・E・C・T

筑摩書房(2023年)ブレイディみかこ 著

尊厳求めて住宅占拠

ロンドンオリンピックから2年後、ロンドン東部のホームレス用シェルターに住んでいるシングルマザーのジェイド、ギャビー、シンディは、市の福祉課から立ち退きを迫られている。公営住宅にはたくさんの空室があるのに、住むところがない人に提供されない。再開発し、高級マンションにするため空室にしておくのだ。そもそも、真面目に働いても生まれ育った町の家賃が払える収入を、得ることもできない。福祉課の職員にせせら笑われ、彼女たちは立ち上がる。生きるために。リスペクト(尊厳)のために。運動のキーワードは食パンとバラ。そう、人はパンだけで生きるにあらず。バラ、つまり、リスペクトを持つことで生きていけるのだ。

近所のスーパーマーケット前で始めた運動は、イギリス中の共感を呼び、支援者と占拠した公営住宅には、互いに助け合うコミュニティーが生まれた。2014年、ロンドンで実際に起きた公営住宅占拠運動をモデルにした物語。

さて、私たちは、どんな社会で生きていきたいのか?


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