10月の「いばらきSDGsプロジェクト」は、県内大学でのSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを学生自身が伝える「Campusリポート」の第4回。最終回となる今回は、筑波大(つくば市)が学内外で協力し、温室効果ガスの排出削減とその意識付けを図っている活動を紹介する。JICA筑波図書館(つくば市)が関連書籍を案内する「もっと知りたい!」は、「捨てないパン屋さん」の話をお届けする。

学食メニューCO₂表示
スポーツ催事で負荷低減

筑波大
筑波大(つくば市)は、さまざまな地球規模課題の解決を目指して、地域や企業、組織と共に数多くのプロジェクトに取り組んでいる。その中から二つの取り組みを紹介する。
健康+地球環境
筑波大には、SDGsの達成や、それに続く「ビヨンドSDGs」の実現に大学として貢献し、人と地球の健全で持続可能な未来を構築するための取り組みを推進する「DESIGN THE FUTURE機構」(DTF機構)がある。
一つ目の取り組みは、DTF機構や学食業者が共同で実施した「学食メニューのCO₂見える化プロジェクト」だ。
このプロジェクトでは、学内二つの学食で、メニューの「カーボンフットプリント」の表示と「ミートフリーメニュー」を期間限定で提供した。原材料の生産から、調理され残飯が処分されるまでに発生する二酸化炭素(CO₂)の排出量(カーボンフットプリント)を表示し、食の選択と環境負荷のつながりを示した。また、動物性食品を使わない大豆ミートのカレーやコロッケといったミートフリーメニューを学食で提供した。肉などの動物性食品は生産過程で多くの温室効果ガスを排出するため、ミートフリーメニューを提供することで、CO₂削減につなげることが狙いだった。プロジェクトを通じて、自分の健康に加え地球環境のことも考えてもらうよう行動変容を促した。
来場者の意識変革
もう一つは、スポーツの社会的影響力に着目して、運動部のホームゲーム「TSUKUBA LIVE!」にサステナビリティー(持続可能性)要素を取り入れる取り組みだ。
スポーツイベントは、観客の車での移動や、会場の空調・照明使用、空き缶やペットボトルといったごみ排出などを通し、環境に大きな負荷がかかる。一方でイベントや選手が参加者に与える影響力は非常に大きい。
この取り組みでは、来場者の意識変革と環境負荷の低減を狙い、会場でのミートフリーメニューの提供や、環境に配慮したパンフレット(FSC認証紙)の採用を進めている。
公共交通機関の利用やマイボトル持参、ごみ分別といったエコアクションに参加してくれた観客には、地域の企業と連携してエコ通貨(地域通貨)を配布している。選手にも協力してもらい、試合前後にサステナビリティー意識を広げるような発信も行っている。世界ではスポーツを通じたサステナビリティーの潮流が加速しており、日本での大学発の事例を筑波大から発信することを目指している。
危機感から活動
私は大学院で藻類の光合成について研究している。学類生の頃から気候変動や生態系崩壊に危機感を持ち、二つの紹介事例のような環境活動に関わってきた。

先日、大学院の授業の一環で佐渡島など自然と人が共生する地域を訪れた。自然が水や食料、安定した生活基盤を支える「社会のインフラ」であるにもかかわらず、対価が十分に支払われていない現状に危機感を抱いた。恩恵を受ける企業や生活者が自然保全に参画できる仕組みの構築などにも、近い将来に関わっていきたいと考えている。
(理工情報生命学術院生命地球科学研究群=博士前期課程=生物学学位プログラム2年 ベイリッツ亜里咲マリー)