《もっと知りたい!③》食品ロス削減の専門家が描いたノンフィクション
SDGsへの理解を深めたい人にお薦めの本をJICA筑波図書館の司書、樫村(松田)ミカさんが紹介する「もっと知りたい!」。本年度3回目は、作ったパンを捨てない店を目指した店主を、食品ロス削減の専門家が描いたノンフィクションを取り上げる。

捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ
あかね書房(2021年) 井出留美 著
パンに込めた「いのち」
私と幼稚園が一緒だった中村くんはパン屋の息子だった。彼の頭からは、いつもパンのいい匂いがした。そういう幸せなイメージとは裏腹に、実際のパン屋さんは、朝早くから数々の調理パンや甘いパンも作って、てんてこ舞い! 売れ残ったパンは捨てられてしまう。
本に登場する田村陽至さんも、パン屋の子として生まれた。環境問題のスタディーツアーをする会社の仕事で、沖縄やモンゴルで働いた経験がある。食べるとは「いのち」をいただくこと。一粒の麦だって無駄にしたくない。「捨てないパン屋」を目指して、「ほんもの」のパンを探しにフランスに旅立つ。修業したパン屋さんでは、有機栽培の小麦を石臼でひいて、まき窯でじっくり焼き上げる。その「こうばしい」パンは村の人に愛され、一つも捨てることはない。一粒の麦も、木のまきも、パン生地を膨らませる酵母も、みんないのち。田村 さんは、いのちのバトンをパンの形にして、お客さんにつないでいく。
この本を読んだら、あなたも「捨てないパン屋」を目指したくなるかもしれない! これは、「しあわせ」な生き方を選ぶ本でもあるのだ。
JICA筑波図書館 土日祝日休館 ☎029-838-1111